言えないまま・・・
19章 5年
5年の月日が流れた。

バタバタと騒々しく、過ぎていく日々。

アキはあれからすぐパリに旅立った。

その後どうしてるのかは知らない。

従弟の直太ですら、音信不通となげいているくらいだから。

なんだか、そんなのもアキらしい。

便りのないのはよい便りともいうしね。

きっと、パリで相変わらず軽いノリで元気にやっていると思う。


私は、数ヶ月後、無事女の子を産んだ。

名前はミフユ。

今年で5歳。

一著前な口答えをするおしゃまな子。

お腹に宿した時は、こんなにもかけがえのない存在になるなんて思いもしなかった。

ミフユの産声を聞いた瞬間、今までにない感動で涙があふれた。

会えてよかったって心底思ったんだ。


「お母さん!あの、きれいな絵のお話読んでぇ。」

ミフユがかけよってきた。

そう。

ミフユが一番お気に入りのお話。


それは、5年前、私とアキがコラボした作品だった。

雑誌が発行され、思わぬ反響を呼んだあの作品は、一冊の絵本になった。

自分でもびっくりだった。

たぶん、私のストーリー以上にアキの絵が皆の気持ちを掴んだんだと思う。

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