言えないまま・・・
やっぱり変わった人。

でも、イラストレーターかぁ。

どんなイラスト描くんだろう?

あんなちゃらちゃらしてる人に限って、繊細なイラスト描いたりするんだよね。

実は、私はちょっとした童話作家だったりする。

まだ大して本は出してないけど、執筆活動はちょこちょこ続けてる。

だから、イラストレーターと会ったりすることはたまにあるわけで。

「アキも昔は大人しくて真面目でいい奴だったんだけどな。幼い頃に苦労しすぎてあんな風になっちまったのかなぁ。」

直太は遠い目をしてため息をついた。

アキ・・・かぁ。

一見おちゃらけた印象なんだけど、影があって、つかみ所のなさそうな感じ。

イラストレーターっていうの聞いて、少し納得かな。

芸術家って、少しつかみ所のない人多いもんね。

そういう私もその端くれだけど。

ほおづえをついて、ぼんやり考えていると、直太が私の頭をゲンコツで軽くコツンとしてきた。

「おい、アキにはあんまり興味持つな。あいつは、かなりの女ったらしだからな。結婚してようがしてまいがお構いなしだ。いい奴だけど気をつけろよ。」

「しょうもないなぁ。」

ほんとにくだらないことを心配する直太だ。

アキには、きっと今日以降会うこともないでしょ。

会う理由もないし。

しかも、一応私は新婚ホヤホヤなんだから。

そして、私は直太に抱き締められてキスをした。
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