トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか?〜
「では本番行きまーす。よーい、スタート!」

テーブルで頬杖を付いている秀のもとに、紗耶香が戻って来る。

「はい!秀のコーヒー」
「ありがとう」

受け取って、秀は紗耶香に500円玉を差し出す。

「え、何これ?」
「俺のコーヒー代」
「いいよー、そんなの」
「でも…」
「あ、じゃあ、スランプの秀に私から励ましのコーヒーってことで」
「そっか。ありがとう」

そう言って手を引っ込める。

あとは、海を眺めながらフリートークだった。

「気持ちいいなー、海もきれいだし」
「ほんとだねー。いいお天気で良かった」

まだカットはかからない。

(何話そう…)

そう考えて、ふと思い付いた瞬はポケットに手をやってから、先程の500円玉を取り出した。

「見てて」

そう言って右手の親指に乗せるとピンと弾き、手の甲に載せて素早く左手で覆う。

「表?裏?どっち?」

紗耶香は、ええー?と少し考えてから
うーん、じゃあ、表!と言う。

秀はゆっくり左手を外す。
そこには、あるはずのコインがなかった。

え?っと紗耶香が顔を近付けると、ゆっくり右手を返し、パッと握っていた拳を開いた。

その途端、黄色の小さなひよこのスポンジが2つ現れた。

「ええー?!可愛い!なんで?!」

紗耶香は目を輝かせてひよこを受け取る。

秀は、手のひらに載せたひよこを撫でながら微笑む紗耶香の横顔に、目を細めた。
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