トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか？〜

抜け出せない悩み

「カットー！」

その声を聞き、ああ、NGだなと瞬は察する。

案の定、少し難しい顔をしながら、藤堂監督がやって来た。

「うーん、瞬。もう少しこう…何かを掴んだ！みたいな感じ出せるか？」
「何かを掴む…ですか」
「そう。腹をくくると言うか、覚悟を決める、みたいな感じかな」

監督の言葉を頭の中で繰り返しながら、はい…と頼りない返事をする。

あんまり分かんないか…と頭を掻きながら、監督は瞬を覗き込む。

「いいか？今まで仕事もボンヤリこなしてた秀が、紗耶香への気持ちに気付き、このままじゃいけないと気持ちを入れ替えるんだ。紗耶香を守っていこう。その為にはもっと成長しなきゃってな。いつか自信を持って、紗耶香に告白出来るように」

分かりましたと頷いた瞬は、けれどそれをすぐ演技には繋げられない。

「うーん…よし！今日はここまで。別のシーン撮るぞ」

監督の言葉に瞬は、すみませんと頭を下げる。

気にするなというように、監督は瞬の肩をポンポンと叩いた。