トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか?〜
「あの、瞬くん。あなたはトップアイドルです。日本中、ううん、世界中に、あなたのファンがたくさんいます。みんなあなたに恋をして、あなたの姿に元気をもらっています」

瞬は黙って明日香の話を聞いている。

「そして私は、あなた達を輝かせる裏方のスタッフです。あなた達が笑顔で歌ったり踊ったり、CMやバラエティに出たり、そんなキラキラな姿を見て、ファンの子達が喜んでくれるのが私のやり甲斐です」

だから…と明日香は少しうつむいてひと呼吸置く。

「だから、あなたが私のことを好きだと言うのは、私にとって許させる事ではありません」

真っ直ぐ瞬を見据えて明日香は言った。

再び沈黙が2人を包む。

やがて瞬はゆっくり立ち上がった。

「分かってる。でも自分の気持ちに嘘はつきたくなかったんだ。言った事を後悔してはいないし、これが俺の本心だ」

そう言って立ち去ろうとした瞬は、ふと壁の時計を見ると、サイドテーブルに置いてあったテレビのリモコンを操作したあと、じゃあ、と手を挙げて病室を出て行った。
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