トップアイドルの恋〜好きになってもいいですか?〜
やがて顔を上げた秀は、明るい口調になった。

「でもさ、俺、やっと気付いたんだ。自分の気持ち。そしたら、覚悟が決まった。自分でもびっくりするくらい、ストンと何かが腑に落ちたんだ。なんかこう、ボールがゴールネットにストンと入るように、気持ち良く」

そう言って紗耶香を見つめる。

「紗耶香。俺は紗耶香が好きだ。高校生の時も、そして今も。いつも甘えてばかりで、はっきり気持ちも打ち明けずにいてごめん。これからは、俺が紗耶香を守っていく。そして紗耶香を守れる強い自分になってみせる。だから…俺と結婚して欲しい」

紗耶香は、秀の言葉に目を見張る。

「嫌か?」
「そ、そういう訳じゃ…私も秀が好きだったし。でも、そんな、結婚なんて、急に言われても」

秀はしばらく考えたあと、ボールを持って立ち上がる。

「え…秀?」

ボールを地面につきながら、秀は紗耶香に言う。

「じゃあこうしよう。俺がここからロングシュートを1発で決められたらYES。外したらNOだ」
「え、う、うそでしょ?!そんな大事なこと、シュートで?」
「見てろ」

そう言うと秀は、一気に集中して、ゴールネットを睨む。
少し息を吸ってから吐くと、小さく頷き、しなやかに体を伸ばしてシュートを打った。

紗耶香が息を詰めてボールの行方を追う。

シュッ!と軽い音を立てて、見事にボールはゴールネットに吸い込まれた。
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