生まれ変わりの条件
3.天使業と想いの糸
僕たちは天界人、いわゆる天使と呼ばれる存在で、見た目は前の世で生きた人間がモチーフとなっている。
天使は神様によって魂を選別されて創られるそうだ。皆、なりたくてなったわけではないが、特別不満もないと聞く。
ただひとつ、名前がないのは不便だ。
「ボクはもう百年以上天使をやってるけど、今のところ生まれ変わりたいなんて思っちゃいない。
天使業は思ったよりやりがいがあるし、退屈とも無縁なんだぜ?」
そう言ってドヤ顔で今日のリストを配るのは、僕の魂を迎えに来てくれた先輩天使だ。彼からは沢山の事を教わった。
「この間なんかは、つい生きてる魂を拾っちゃって大慌てしたよ」
「生きてる魂?」
これまでに経験のない事なので、僕はことさら彼の話に食いついた。
「そっ。つまり幽体離脱して元の体から離れちゃった魂の事ね。
死亡者リストにないから勿論送れないし、元の体に還すのがベストなんだけどさー。その魂がある人間と“想いの糸”で繋がっちゃって、もう面倒くさいの何のって!」
大袈裟にため息をつく先輩の苦労を想像し、僕にも嘆息が移る。
“想いの糸”というものは、人間同士が持つ強い絆で現れるもので、天使としては少し厄介なのだ。