意味不明彼氏


「蓮、まだあ?」


永遠に続くのではないかと思わせる程、長い階段。


体力も、そろそろ限界に近付いてくる。


もう足も疲れ、息も荒れてきた。


先を歩く蓮との距離も広がっていく。


そんなあたしに気付いた蓮は、動く足を止める。


「お前…、手ばっか鍛えないで足も鍛えろ」

蓮は呆れ顔を浮かべながら、そう言った。


な…ッ!


「うるさいなあ!手、鍛えてないわ!」


握力が強いのは、きっと父親の遺伝なのだろうか。


母親はあたしと違い、握力も弱くてものすごい華奢な身体つき。


母親の情報によると、あたしの父親は元ヤンだったらしい。


だから、きっとその遺伝。

遺伝だから、あたしは悪くない…。


あたしは、あたしと母を捨てた父が憎い。


だけど…憎いのに、会いたいという気持ちが胸のどこかに隠れている。



こんなこと…、蓮には言えない…。



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