意味不明彼氏

「もしもーし」


蓮にバレないように、小さい声で話す。


『あ、もしもし…俺だけど…』


蓮の声が耳に入ってくる。


蓮はあたしが後ろに隠れている事なんて知らない。


だからこそ、好奇心が芽生えてくる。



「どした?」

『あ…うん。今、家?』


深波は携帯に耳を近づけていて、話を聞いているようだった。


あまりの近い距離に、あたしは深波を突き飛ばした。


「え?あ、今、コンビニ。あと少しで帰る」


咄嗟に思いついた嘘を蓮に伝えた。


後に、罪悪感が心の中に居座る。



『……今からさ…、お前の家行っていい?』


……蓮の突然の一言。


頭の中で、リピートが繰り返される。


え、ええ!?


「な…、ななな、何で!?」


あたしは、慌ててまともに口が開けない。

『いや…、さっき兄貴と電話で喧嘩したんだよね。だから家に帰りづらいから』


……あ、そういうこと。


そうか。

蓮とあたしは肉体関係を持つべき関係なのに、持っていないから、そういう心配はないのか。






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