意味不明彼氏


あたしはチラッと蓮の席に目をやる。


蓮は優と一緒に、また変な話をしているのか笑っていた。


でも、決してあたし達を見ない。

みんなはあたし達を見ているのに…。


あたしがひとつため息をつこうとした時…。


「怪我、ヤバくないか!?大丈夫!?」


一人の男があたしの肩に手を置いて、心配そうに顔を覗かせる。



その男…。

一樹。


一樹は蓮の友達の一人で、よく会話をする仲。


でもそれは蓮がいる時限定。


こんな風に、話をかけることは滅多にない。



「…や。普通に大丈夫だけど」


あたしは首を傾げながら、そう答える。

「大丈夫なわけないじゃん…ッ!!女の子なんだよ?顔に傷が残ったら…」


一樹はそう言いながら、あたしの切れた唇から出る血を手でふき取る。


恥すら見せず、当たり前の様にやるものだからあたしはつい固まってしまう。


気付けば、顔と顔の距離がものすごい近い。



一樹の茶色に染められた前髪が、あたしの頬にあたる。




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