意味不明彼氏


「あの…、本当にそんなのいないから。俺がお前に手出さないのは…、汚したくないからであって……」


「わかってるよ、早く行ってこい」


オドオドしている蓮は、可愛い。

「は…!?分かってるって…!?」


あたしは、思う。

蓮は、意外に天然…いや…かなりの天然だ。


「セフレがいない事ぐらいわかるっての」


あたしは笑いながらそう言って、蓮のおでこを軽く押した。



「あの…ッマジで、そういうんじゃないから。後で教えるから」


……だから、分かってるってば。


本当…、アレは重症だな。


蓮はコートを羽織り、出かける仕度を始める。


……どこに行くのだろうか。


「おい、どこ行くんだ?」


先生が玄関へと向かった蓮を呼び止める。


蓮は先生の声に反応して後ろを振り返る。


「すぐ戻る」


この一言だけを残し、風のように去っていった。


「南さん…、如月君どこ行ったんですか?」


エリ子が、可愛らしく小首を傾げてあたしに尋ねる。


「さあ?」

……本当、どこに行ったのか。


あんな必死な顔してんだもんなぁ…。


あれでも行くなっていう人間は相当悪だ。
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