意味不明彼氏
* *
あたしと蓮は2人で家まで歩き続けるものの…
一言も交わさない。
…交わせないよね…。
気まずいって…。
「お前から、入れよ」
「……ん」
玄関で交わしたこの言葉だけ。
たった一言なのに…。
恋しいとさえ、思う。
「あっ…、遅かったですね…っ」
花坂さんの高い声が、頭に響いて痛い。
「別に。お前に、関係ない」
蓮はそれだけ言うと、すたすたと奥に進む。
あたしの母親は、海外出張。
父親なんて、知らない。
いわゆる、ヤリ逃げ?
まあ、もういいんだけど。
「ごめんね。蓮、みんなにあーいう奴だから…」
「あ、はい。大丈夫です。知ってますから」
………ん?
知ってますから……?