爽やかエリート御曹司は年下妻を可愛がりたい、愛したい。
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ビルを出て少し歩いたところに美味しいカレー屋さんがある。誠さんに誘われた時はいつもこのカレー屋さんだ。
「奏和ちゃん、何食べる? 前と同じものかな?」
「あっ、はい。えっと……無水トマトチーズカレーとナンにします。誠さんは?」
「今日は奏和ちゃんと同じにするよ」
誠さんは開いていたメニュー表を閉じて収納すると、店員さんをよんでトマトチーズカレーを頼む。
「そうだ、奏和ちゃんのこの前くれた刺繍好評だよ。女子社員がね、売って欲しいと言っていたから奏和ちゃんのサイト紹介しておいたよ」
この前あげた刺繍とは、格安で生地を買わせていただいたお礼に刺繍をしたものを誠さんに贈ったものだ。それを彼が会社の見える場所に置いたらしい。
「えっ、ありがとうございます。直接、言ってくれればよかったのに」
「いや、人気作家の刺繍なんだからちゃんと正規ルートで購入しないと」
「誠さんはいつも真面目ですね……ふふ」
「そりゃあね、……それに」
何か誠さんが言いかけた時、「お待たせいたしました〜」と注文した品が運ばれてきて言葉を遮られてしまう。
「誠さん、今、言いかけたことって」
「……ううん。なんでもない。食べようか」
なぜか不満そうな、寂しそうな雰囲気の誠さんを横目に見ながらナンを一口大にちぎってからカレーにつけて食べ始めた。
その後、食べ終わって二人でラッシーを堪能してなんでもない話をしていればもうお昼休みが終わる時間になったので帰ることにした。
「じゃあ、またね」
「はい。ありがとうございました!」
いつもと同じ言葉を交わし、次はいつ会えるのかなとワクワクしながら帰路についた。