臆病な片思い


「う……ん」

目を開けると見慣れない部屋だった。
誰かの温もりを感じる。

ハッとして横を向くと、気持ち良さそうに眠っている彼がいた。
しかも上半身裸……。

まさか!
掛布団の下を見ると私も何も身に着けていない。

彼と同じベッドに寝ていて、私も彼も服を着ていないってこの状況がいきなり過ぎて訳がわからない。

何があったの?

慌てて昨夜の記憶を探る。ぼんやりしていた脳が急いで情報を探し出す。
辛うじて、パーティーの後、彼の部屋に誘われた事を思い出す。連れて来られたタワマンから見える夜景が綺麗で、彼と景色を見ながら気分よくお酒を飲んで……あとは思い出せない。

とにかく、ここから抜け出さなければ。
彼を起こさないように静かにベットから出る。サイドテーブルの上に私の眼鏡を見つけて、かける。床には昨夜着ていた下着やドレスが落ちている。それらを広い集めて、寝室らしき部屋を出た。

手早く服を身に着け、廊下を進んで広い部屋に出る。
テーブルの上にはシャンパン、ワイン、ウィスキーの空き瓶と空のグラスが二つ並んでいる。昨夜の残骸を見て胃がムカムカする。頭も痛い。これは二日酔いだ。

最悪。記憶がなくなるまで飲むなんて。
それも、プレイボーイの彼と一緒にいる時に。一番警戒しなきゃいけない相手だったのに。

きっと彼はいつもパーティーの相手を家に連れ込んでこういう事をしてるんだ。

私は彼の一晩きりの相手。
そう思ったら悲しくなってくる。
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