臆病な片思い
※
休みたかったけど、気まずくなる気がして、会社に行った。
黒いパンツスーツに、髪は後ろできっちり一本に結んで武装する。
大丈夫。いつもと変わらない。
彼と顔を合わせても何も変わらない。私は優秀な秘書。
昨夜は何もなかった。それでいい。
「おはよう」
給湯室でコーヒーの準備をしていたら、いきなり後ろから声をかけられる。
振り向くと、ネイビーのスリーピーススーツ姿の彼がいた。
「えっ……あっ、氷室……社長」
不意をつかれた彼の登場にこれ以上ない程体が熱くなって、動悸が激しくなる。こら動揺するな。こんなの何て事ないんだから。
「何も言わずに帰るなんて、つれないじゃないか」
目を細めて彼が私を見つめる。
普段とは違う甘い表情にドキンっと胸が高鳴る。
「あ、あの、よくお休みになっていたので」
本当は顔を合わせるのが気まずくて彼の部屋から逃げ出した。
「昨夜の事はどこまで覚えている?」
彼の視線が私の唇で止まる。
そうだ。私、彼と……キスしたんだ。しかも、彼からじゃなくて私から。
ベッドに誘ったのも私からだった……!
「何も、何も覚えておりません。失礼があったら謝ります。申し訳ございません」
恥ずかしくて彼の顔を見ていられなかった。
必死に頭を下げる。
休みたかったけど、気まずくなる気がして、会社に行った。
黒いパンツスーツに、髪は後ろできっちり一本に結んで武装する。
大丈夫。いつもと変わらない。
彼と顔を合わせても何も変わらない。私は優秀な秘書。
昨夜は何もなかった。それでいい。
「おはよう」
給湯室でコーヒーの準備をしていたら、いきなり後ろから声をかけられる。
振り向くと、ネイビーのスリーピーススーツ姿の彼がいた。
「えっ……あっ、氷室……社長」
不意をつかれた彼の登場にこれ以上ない程体が熱くなって、動悸が激しくなる。こら動揺するな。こんなの何て事ないんだから。
「何も言わずに帰るなんて、つれないじゃないか」
目を細めて彼が私を見つめる。
普段とは違う甘い表情にドキンっと胸が高鳴る。
「あ、あの、よくお休みになっていたので」
本当は顔を合わせるのが気まずくて彼の部屋から逃げ出した。
「昨夜の事はどこまで覚えている?」
彼の視線が私の唇で止まる。
そうだ。私、彼と……キスしたんだ。しかも、彼からじゃなくて私から。
ベッドに誘ったのも私からだった……!
「何も、何も覚えておりません。失礼があったら謝ります。申し訳ございません」
恥ずかしくて彼の顔を見ていられなかった。
必死に頭を下げる。