臆病な片思い
片思いって、どういう意味ですか?
そう聞こうとしたら、先に彼が口開く。
「この間、君と過ごした夜。俺は君とは寝ていないから安心しろ」
「へっ?」
思考がついていかず、間抜けな声が出た。
「君はすっかり酔っててね。苦しいと言うから、ドレスは脱がせただけだ。下着は自分で脱いでいたぞ。それで眠いと言って眠ってしまった」
拳を口元にあてた彼がクックックッと低い声で楽しそうに笑う。
カァッと頬が熱くなる。
恥ずかしい……。
私、なんて事を……。
「安心したか?」
「でも、社長、私の隣で裸で寝てましたよね?」
「寝る時はいつも全裸だ」
「えー! じゃあ、本当に何も?」
「酔い潰れた女に手を出す程、餓えちゃいない」
クスッと笑った彼が遠い存在に思える。
そうだよね、彼が私に手を出す訳ない。
良かった。もう少しで片思いって言葉の意味を聞く所だった。きっと私の期待した答えは返って来ない。
「雑談はここで終わり。浅川は帰りなさい」
銀色の腕時計を見つめ、彼が言う。
「でも、社長、明日の取締役会の準備でしたら私にも手伝わせて下さい」
明日の取締役で今回の買収未遂事件の責任について彼は追及される。
どう対応するつもりなんだろう? こんな時こそ秘書としてそばにいたい。
「社長命令だ。帰りなさい」
柔らかな表情を浮かべていた彼が再び仕事モードの厳しい顔をする。
「でも、社長」
「心配するな。大丈夫だから。俺が信じられないか?」
「……いえ」
「浅川、心配してくれてありがとう。気をつけて帰りなさい」
「失礼します」
心配だったけど、帰るしかなかった。
「あの、社長」
社長室を出る直前、胸騒ぎがして、もう一度、声をかけた。
「また明日」
そう声をかけると、彼が「ああ、また明日」と返してくれた。
そう聞こうとしたら、先に彼が口開く。
「この間、君と過ごした夜。俺は君とは寝ていないから安心しろ」
「へっ?」
思考がついていかず、間抜けな声が出た。
「君はすっかり酔っててね。苦しいと言うから、ドレスは脱がせただけだ。下着は自分で脱いでいたぞ。それで眠いと言って眠ってしまった」
拳を口元にあてた彼がクックックッと低い声で楽しそうに笑う。
カァッと頬が熱くなる。
恥ずかしい……。
私、なんて事を……。
「安心したか?」
「でも、社長、私の隣で裸で寝てましたよね?」
「寝る時はいつも全裸だ」
「えー! じゃあ、本当に何も?」
「酔い潰れた女に手を出す程、餓えちゃいない」
クスッと笑った彼が遠い存在に思える。
そうだよね、彼が私に手を出す訳ない。
良かった。もう少しで片思いって言葉の意味を聞く所だった。きっと私の期待した答えは返って来ない。
「雑談はここで終わり。浅川は帰りなさい」
銀色の腕時計を見つめ、彼が言う。
「でも、社長、明日の取締役会の準備でしたら私にも手伝わせて下さい」
明日の取締役で今回の買収未遂事件の責任について彼は追及される。
どう対応するつもりなんだろう? こんな時こそ秘書としてそばにいたい。
「社長命令だ。帰りなさい」
柔らかな表情を浮かべていた彼が再び仕事モードの厳しい顔をする。
「でも、社長」
「心配するな。大丈夫だから。俺が信じられないか?」
「……いえ」
「浅川、心配してくれてありがとう。気をつけて帰りなさい」
「失礼します」
心配だったけど、帰るしかなかった。
「あの、社長」
社長室を出る直前、胸騒ぎがして、もう一度、声をかけた。
「また明日」
そう声をかけると、彼が「ああ、また明日」と返してくれた。