臆病な片思い


彼が去って一年が経つ。
私は秘書課から他の課への転属を希望し、彩香と同じ総務課に移った。

秘書をやるのは彼で最後。
他の誰かの秘書なんてやりたくない。

「美羽じゃない?」

一緒に昼食をとっていた彩香がテレビを見つめたまま呟く。

「何が?」

彩香の視線を追うようにテレビを見つめると、油絵で描かれた女性の肖像画があった。柔らかな笑みを浮かべるその女性を見て驚いた。私だ。私に似ている。

「ねえ? 美羽に似てるでしょ?」

彩香が口にする。

「うん。びっくりした。似てる気がする」

でも、どうして? 誰が描いたの……?

まさか……。

心の中に変わらない熱い想いが溢れる。

「あの絵、どこの美術館にあるの?」
「えぇ-と、青山の美術館って言っていたけど」

彩香の言葉を聞き、席を立つ。

「美羽?」
「急用思い出した!」

カフェテリアを出て、美術館に向かった。
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