臆病な片思い
彼の胸に飛び込んだ。

「浅川……」

驚いたように彼が私の名を口にする。

「会いたかった。あなたに会いたかった!」

言いたい事は沢山あったけど、一番伝えたかった言葉が出た。

「俺も会いたかった」

彼が抱きしめてくれる。
彼の匂いと、体温と逞しい腕に包まれる。

視線を向けると、瞳が重なる。彼の黒い目に私が映っている。

「なんでいきなりいなくなったんですか? 連絡先ぐらい置いていって下さい。社長がいなくて、私、苦しくて、辛かったんですから」

一年前よりも、日焼けした彼の顔を見ながら、文句が零れる。

「私、社長の事、好きなんですから! 社長がいなくなった後も、今も好きなんですから……」

 やっと言えた。

 彼が驚いたように黒い瞳を見開く。
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