臆病な片思い
「ご冗談を。全くそんな気にはなりませんから」

いつものポーカーフェイスを浮かべて、戒めるように彼に視線をやる。

「残念。社内一堅物の君とデ-トするのも面白そうなんだがな」

彼が口の端をニヤッとあげ、挑発的な笑みを浮かべる。
全くこの人はいつもこうやって私をからかう。

いつもの冗談に呆れ、ため息を落とした時、立ち上がった彼が私に手を伸ばして来る。いきなり、彼の手が私の眼鏡に触れた。

「それに、美人だ」

私の顔から眼鏡を奪い、彼が満足気に微笑む。

不意打ちにポーカーフェイスが崩れる。彼に見つめられ鼓動が速まり、頬が熱くなってくる。恥ずかしくて堪らない。秘書としてこんな事に動じている場合じゃないのに。
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