臆病な片思い


行くように言われたパーティー会場はホテルの2階にあった。
会場に入ると、広いホールにはタキシードとドレス姿の男女が大勢いて、楽団が何やら音楽を演奏している。高い天井には豪華なシャンデリア。

場違いな場所に戸惑いながら、人をかき分けて進むと……

「やぁ、よく来てくれたね」

黒タキシ-ド姿の彼に声をかけられる。
あまりにも彼がカッコ良くて、見惚れてしまう。

今夜の彼は王子様みたい。
私はシンデレラかな?

「すまないね。急に、同伴する女性が都合が悪くなってしまってね。それで、君が浮かんだんだ」

同伴する女性の代理って事か……。
なんだろう。面白くない。

「はぁ、そうですか」

彼が柔らかな笑みを浮かべ、それから無言で私を見つめる。
容赦ない視線を向けられ、落ち着かなくなってくる。

何か私、気に障る事言った? 
それともこのドレス姿が似合わない?

「何ですか? 人をじっと見つめて」
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