星みたいな恋をしよう
泣き声が聞こえないよう、絆は口元を強く手で押さえ、涙を流す。口を塞いでいるため、絆の声は、パブにいる賑やかな人の声やパブに流れているBGMによってかき消されていく。

(少しだけ、少しだけ泣こう。そうすれば気持ちは落ち着いてくれるはずだから……)

絆がそう思っていると、頭にバサリと何かがかけられる。それは、オスカルが着ていたジャケットだった。オスカルの腕が絆に触れる。

「絆、もう出よう」

「えっ?」

絆が言葉の意味がわからず聞き返すも、オスカルは素早く会計を済まし、絆の腰に手を回してパブを出てしまう。絆はただ、戸惑っていた。

「オスカルさん、どうしてパブを出たりなんかーーー」

絆の言葉は最後まで言えなかった。パブの前で、オスカルに強く抱き締められたからである。

「ごめんね、あんな話を言われていたら泣きたくもなるよ」

オスカルが何故か申し訳なさそうに謝る。逞ましい腕が絆を包み込んでおり、涙は引っ込んでしまった。
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