【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「あ、な、ちょっ。クリス様、一体、何をおっしゃっているんですか」
 フローラは顔中を真っ赤に染めて、クリスの胸の辺りを握りしめた両の拳でぽかぽかと叩き始めた。
 そんな二人をブレナンは、笑いながら見ている。
「相手がクリス殿だから、フローラもそのような態度をとるのかな?」
 と言うブレナンはやはり父親目線だ。
「ちょ、ブレナンさんも何をおっしゃっているんですか」
「仲良きことは美しきかな」
 はは、とブレナンは笑った。
 だが、ブレナンもこのような彼女を見るのは初めてだった。もちろん、それはクリスの方もそうである。
 クリスがフローラとじゃれ合って笑っている。共通点が無いように見える二人だが、お互いにどこか惹かれる部分と認め合える部分と、そしてお互いの足りない何かを補えるような、そんな関係を築けているのではないだろうか。
 フローラはあの警備隊長であるサミュエルと長く付き合っていたが、その間、彼女のあのような生き生きとした表情を見たことがあっただろうか。
 周囲からはお似合いの二人と言われていたが、それは騎士団の中でも眉目秀麗、容姿端麗という観点からでのお似合いの二人だったのだろう。
< 103 / 254 >

この作品をシェア

pagetop