【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「え、と……」
 なんという噂だろう。フローラがサミュエルを捨ててクリスと付き合い始めた、と、そのような話が広まっているのだろうか。
「ジェシカ様。どこからそのようなお話を?」
「え? 私の勝手な推測だけれど」
 ジェシカの勝手な推測、というところでほっと胸を撫でおろした。特に噂になっているというわけではないようだ。
「だって、あのときのサミュエルの態度をみたら、そう思うじゃないのよ」
 ジェシカの言う「あのとき」とは、恐らく幾日前かのあの出来事。
「サミュエルとはきちんと別れましたから」
「え、別れたの? なんで?」
 フローラが彼と別れたことを口にするたびに、聞かれるその理由。最初の頃は、ズキリと心が痛んだのだが、最近では慣れてきたものだ。
「結婚したら仕事を辞めて欲しい、と言われたから、ですかね。価値観の違い。性格の不一致。理由としては、そうなりますかね」
「でも、フローラだって、サミュエルのことはある程度知っていて、それで付き合ったわけでしょ? その、同じ騎士団に所属していたわけだし。この人となら付き合ってもいいと思って、そうやって付き合い始めたのに、それでも、やっぱりダメなものなのかしら……」
 別れた、という事実がジェシカを不安にさせているのだろうか。
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