【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 それでもその大臣がその意見を押し切ったのは、アルカンドレ王子の誕生パーティの件があったからだ。どうやらこの話をわざと温めておいた人物がいる。本来であれば、この話が入ってきた時点ですぐさまジェシカの外交の日程が組まれるはずだったのだが。
「通常ルートで向かうと、王子の誕生パーティに間に合わないという理由で、山越えルートだ」
 理由は単純明快。
「団長」
 エセラの鋭い声が響いた。
「わかっている。山越えルートなどあり得ない。これは、ジェシカ様と隣国の王子の縁談を破談させようとする誰かの考えであることなど、俺だってわかっている。だが、それを証明できるだけの証拠は無いし、あったとしてもどうしようもない。とにかく我々にできることは、約束の日までに、無事にジェシカ様を隣国に届けること。出立は、五日後」
 五日後。それも急な話だ。だが、ジェシカは何が何でもアルカンドレの誕生パーティに出席したいのだろう。誕生パーティは十日後。山越えしてアリハンスに入国して、準備をして、ということを考えれば五日後の出立というのも際どいラインだ。だが、準備を怠ると山越えすらできなくなる。
「ですが、山越えです。魔獣だって、どれくらい潜んでいるかわからない」
「だから、だ。だから最初に言った。断ってもいい、と。俺はお前たちを失うようなことはしたくない」
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