【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「団長。私は行きますよ」
 すっと、右手を挙げたのはもちろんフローラである。
「団長のおっしゃりたいことはなんとなく理解できました。誰かが、ジェシカ様の縁談を破談にするために、わざと隣国からの連絡を怠った。それによって、今回は危険な山越えルートで隣国に向かう必要が出てきたわけですが、ここでジェシカ様に何かあれば隣国のせいにできるし、もしジェシカ様が、そのパーティの出席を断ったのであれば、恐らくこの縁談の話はなかったことになる。だったらそのどちらでもなく、きちんと約束の日までにジェシカ様を隣国に無事にお届けする。それが私の役目であると思っております」
「フローラ……」
 アダムは部下の名を呟く。
「団長。……もちろん、私も行きます」
「エセラ?」
 声をあげたのはフローラだ。
「フローラ。私たちは約束をしたでしょう? 何があってもジェシカ様を一番に守るって。こんな、政略臭いことに巻き込まれているジェシカ様を守らなかったら、ジェシカ様の護衛騎士として失格よね。それに私たちが護衛を断ったら、誰が護衛につくの? 私たちが断って、ジェシカ様がアリハンスに行けなくなったら、それこそ相手の思うツボよ」
「君たち……」
 アダムは何かを言いたそうなのだが、その言葉が出てこない。
< 114 / 254 >

この作品をシェア

pagetop