【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「フローラはどうしてそんなに落ち着いていられるの? どう考えたって、ジェシカ様を殺そうとしているようにしか見えないでしょ」
「エセラ、あなた忘れているわよ」
「何が?」
「私がただの護衛騎士ではない、ということを」
 そのフローラの顔に浮かんでいる笑みが、何かしら企んでいる策士のように見えたため、エセラは驚いて腰を戻した。そうだ、フローラはただの護衛騎士ではない。
 その様子を見たアダムはゆっくりと頷いた。
「わかった。では、二人はジェシカ様の護衛として隣国へ共に向かう、ということでいいな。人選が決まったら、宰相に報告しなければならなくてな。今回の件は、陛下も宰相も頭を悩ませている」
 特にあの世話焼きおじさんである国王陛下は、第一王女であるジェシカのことを可愛がっていた。隣国アリハンスのアルカンドレ王子との縁談についても、嫌なら断ってもいいんだぞ、と娘には言っていたらしい。だが、ジェシカはそれを断るようなことをしなかった。これも何かの縁だから、ということで、手紙のやり取りを始めたようだ。といっても、まだお互いに一度きりのやりとりではあるが、その手紙でアルカンドレに対する好感度はあがったようだ。手紙を胸に抱えながら、その内容を嬉しそうに教えてくれたジェシカの姿が目に浮かぶ。
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