【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「クズですね」
 話を聞き終えたクリスが、お茶を一口飲んで、そう言葉を吐いた。
「世の中、クズが多すぎる」
「ジェシカ様は隣国に行くことを望まれています。ですから、私はその手助けをしたいと思っております」
「ですが、彼らの狙いはその王女の縁談を失敗させること、つまり王女がアリハンスに行かない、と言わせるために仕組んだこと」
「はい。それはジェシカ様も理解されております。ですから逆に、何が何でも今回の外交を成功させたい。そう思っております」
「今回の件、我々魔導士団の方には、話がきていませんが」
「はい。それもあちらの策略の一つだと思うのですが。今回はジェシカ様の外交であるため、魔導士まで連れて行くと体裁が悪いとかなんとか、という理由だそうです」
 体裁のために王女の命を危険に晒す、ということか。いや、王女にその外交を断ってもらうための屁理屈だろう。
「それで、クリス様にお願いと言いますか、ご相談があるのですが」
 フローラが顔をクリスの方に向けると、鼻先が彼の髪に触れた。それだけ距離が近いのだ。
「なんでしょう」
 クリスが振り向いて言うものだから、彼の息がふっと頬にかかった。だから、つい頬が熱を帯びてしまう。
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