【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 クリスは何度も執拗にフローラの唇を食んでいた。そして気付けば、口の中に彼が入っている。
 フローラは突然の出来事に、思考が追い付かない。魔力の解放について話し合っていたはずなのに、突然始まった行為は何なのか。
 クリスの少し厚めな舌は、フローラの口内を蹂躙する。息つく隙を与えず、彼女の歯列をなぞり、その上顎を刺激して、そして逃げようとするフローラの舌にそれを絡みつける。飲み込めない唾液が、フローラの口の端から溢れてくる。息苦しくなり顔を左右に振ろうとするけれど、クリスの手ががっちりと彼女の顎を抑え込んでいるため、それもできない。
「あ……、ンふっ……」
 呼吸を求めて、クリスから離れようとその手を彼の肩にかけるが、クリスの唇は彼女の口を離してくれない。あまりにも苦しくて、意識を手放しそうになりながらもそれを必死にこらえ、彼の肩をつかんでいる手に力を込めてみた。
 クリスも彼女の異変に気付いて、やっとその唇を解放する。
「クリス、さま……。何を、なさるんですか」
 目尻に涙をためながら、クリスによってべたべたにされた口元を袖口で拭いたフローラは、キリっとクリスを睨んだ。
 クリスは楽しそうに笑っていて、口元をペロリとその舌で舐め回す。
「あなたの魔力の解放のお手伝いを」
 フローラはそれとなくクリスから距離を取ろうとした。腰を浮かして、ちょっと右側にずれてみる。すると、クリスも真似をして右側にずれるため物理的な距離は先ほどと変わらない。
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