【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「はい」
 フローラもゆっくりと頷いた。
「フローラ嬢は」
 いきなり名を呼ばれたので、彼女の心臓はドキッと跳ねた。
「甘いお菓子は好きですか?」
 テーブルの上に並んでいるお菓子を見ながらクリスは言った。
「はい。好きです」
 フローラが答えた。
「私も甘いお菓子は好きです。似合わないかもしれませんが」
 あのクリスが甘いお菓子が好きだということは知らなかった。似合わないのではない、意外だったという方が正解。
「私も甘いお菓子を作ることが好きです。似合わないかもしれませんが」
 クリスはまた驚いたのか、フローラの方にゆっくりと首を回してきた。
「フローラ嬢は、お菓子を作ることができるのですか?」
「あ、はい。作るのは好きです。それが美味しいかどうか、自信はありませんが」
 フローラが、はにかみながら答える。何度か彼に作ったことはあったが、あの人はそれを義務であるかのように食べていた。美味しいともまずいとも、なんとも言わずに。
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