【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
さて、フローラ自身、自分の魔力の行方をめぐってそのような事態を引き起こそうとしていることは露知らず。
馬車で不規則に揺られながら、クリスに言われた通りに魔力を放出していた。このことは事前にエセラにだけ伝えてある。それは、この任務を引き受けるとき、彼女の前であのように啖呵を切ってしまったため。
「フローラ、具合が悪いの?」
黙って、じっと気を張り巡らせているフローラの様子が、いつもと違うと思ったのだろう。ジェシカが不安に思ってフローラに声をかけてきた。
「ジェシカ様」
と優しく声をかけたのはエセラだ。
「フローラは今、魔獣の気配を探っております」
魔力を放出して魔獣を威嚇している、とは口にしない。エセラも、フローラの力はできるだけ隠しておくように、とアダムに念を押されているから。
「魔獣の気配?」
ジェシカは隣に座っているエセラに視線を向ける。はい、とエセラは頷く。
「我々騎士は、そういった不穏な気配を察するように訓練を受けていますから。その気配に気付けば、魔獣に襲われるより先にそれらを討伐することができますので」
「そう。迷惑をかけるわね」
「いいえ、迷惑ではありません。ジェシカ様にこうやって仕えることができること、それが私たちの喜びでもあるのですから」
エセラの言葉に、ジェシカは少し口元を緩めた。緊張しているのはジェシカも同じなのだろう。自分の我儘のせいで周囲の人を危険に巻き込むかもしれない、というその思い。
馬車で不規則に揺られながら、クリスに言われた通りに魔力を放出していた。このことは事前にエセラにだけ伝えてある。それは、この任務を引き受けるとき、彼女の前であのように啖呵を切ってしまったため。
「フローラ、具合が悪いの?」
黙って、じっと気を張り巡らせているフローラの様子が、いつもと違うと思ったのだろう。ジェシカが不安に思ってフローラに声をかけてきた。
「ジェシカ様」
と優しく声をかけたのはエセラだ。
「フローラは今、魔獣の気配を探っております」
魔力を放出して魔獣を威嚇している、とは口にしない。エセラも、フローラの力はできるだけ隠しておくように、とアダムに念を押されているから。
「魔獣の気配?」
ジェシカは隣に座っているエセラに視線を向ける。はい、とエセラは頷く。
「我々騎士は、そういった不穏な気配を察するように訓練を受けていますから。その気配に気付けば、魔獣に襲われるより先にそれらを討伐することができますので」
「そう。迷惑をかけるわね」
「いいえ、迷惑ではありません。ジェシカ様にこうやって仕えることができること、それが私たちの喜びでもあるのですから」
エセラの言葉に、ジェシカは少し口元を緩めた。緊張しているのはジェシカも同じなのだろう。自分の我儘のせいで周囲の人を危険に巻き込むかもしれない、というその思い。