【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 その陰の功労者のことを知っているエセラは、このアリハンスにいる間はフローラの負担を軽くするようなシフトを組んでくれた。また、アリハンスからもジェシカの護衛についてくれるというので、エセラ自身の負担も軽くなっている。
 そうやって、ジェシカが一人でこなす外交という名のアルカンドレとの初顔合わせは何も問題が起こることなく終わろうとしていた。
 恐らく、二人は正式に婚約を交わすことになるだろう。それもかなり近いうちに。もしかしたら、婚約をせずに結婚という流れになるかもしれない。ジェシカは成人をしているし、アルカンドレもジェシカよりも四つ上だ。今までそういった話が出なかった方がおかしい。ということは、水面下ではいろいろと仕組まれていたのかもしれない。きっと、ジェシカ大好きあの世話好きおじさんである国王がしぶっていたのだろうと、フローラは勝手に思っていた。

 アリハンスでの滞在も残すところあと二日となったときに、このアリハンスの事務官が文字通り飛んでジェシカの元へとやってきた。
 手には一通の書簡。エセラが受け取り中身を確認する。みるみるうちに彼女の顔が歪む。
「どうかしたの? エセラ」
 ジェシカが不安気に尋ねた。
「今から十日後に、ストリダンから王太子夫妻がデトラースを訪問されるという内容です」
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