【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「あの頃の聖人は、もう人として扱われていなかった。神のような存在だ。自由を奪われ、国と民のためだけにその力を使う。肉体的にも精神的にも拘束されていたようなものだ。だが、その聖人が、突然いなくなった」
「いなくなったのですか? 亡くなったのではなく?」
ブレナンは静かに頷く。
「行方不明、というやつだな。突然、この王宮からその姿を消した。人攫いにあったとか、逃げ出したとか、そういう噂が流れた。もちろん、この国にとって重要な聖人であるから、関係者は血眼になって彼女を探した。だが、見つからなかった。彼女がいなくなって二年が経ってから、聖人は亡くなったと判断された」
そこでブレナンは喉を潤すかのように、お茶を一口飲んだ。クリスにとってはその動作がなぜかもどかしく感じた。彼の話の続きを早く聞きたいという思いからだ。
「その聖人が行方不明になってから一月後に、フローラの父親は騎士をやめた。護衛対象である聖人がいなくなったのだから、仕方ないことだとも思えるのだが」
クリスはブレナンの言いたいことを、なんとなく察す。
「もしかして」
「推測の領域になるが。恐らく、フローラは聖人の娘だろう。あの今の力がそれを証明している」
「つまり、フローラの力が封じられていたのも」
「恐らく、彼女の母親の仕業。自分と同じ目に合わせないように、という」
「いなくなったのですか? 亡くなったのではなく?」
ブレナンは静かに頷く。
「行方不明、というやつだな。突然、この王宮からその姿を消した。人攫いにあったとか、逃げ出したとか、そういう噂が流れた。もちろん、この国にとって重要な聖人であるから、関係者は血眼になって彼女を探した。だが、見つからなかった。彼女がいなくなって二年が経ってから、聖人は亡くなったと判断された」
そこでブレナンは喉を潤すかのように、お茶を一口飲んだ。クリスにとってはその動作がなぜかもどかしく感じた。彼の話の続きを早く聞きたいという思いからだ。
「その聖人が行方不明になってから一月後に、フローラの父親は騎士をやめた。護衛対象である聖人がいなくなったのだから、仕方ないことだとも思えるのだが」
クリスはブレナンの言いたいことを、なんとなく察す。
「もしかして」
「推測の領域になるが。恐らく、フローラは聖人の娘だろう。あの今の力がそれを証明している」
「つまり、フローラの力が封じられていたのも」
「恐らく、彼女の母親の仕業。自分と同じ目に合わせないように、という」