【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
ということは、この部屋から逃げるのが得策だろう。サミュエルから視線を逸らさずにこの部屋の出口へと向かう。残念ながら出口はサミュエルの背にある。
だけど、彼はフローラの狙いに気付いたようだ。ニタニタと笑いながら、ちらっと後ろに視線を向けると、またフローラに視線を戻す。
「もしかして、逃げようとしてる?」
「もしかしなくても」
「どうして?」
「サミュエル、あなたとはきちんと別れたでしょ。それにも関わらず、合鍵使って、人の部屋に勝手に入るようなことをして。そういう非常識な人間だとは思わなかった」
そこで、フローラは自分で口にした言葉に矛盾を感じた。なぜなら、フローラは彼と付き合っているときに、彼にここの合鍵を渡したことはなかったからだ。それは、逆もまた然り。
不規則な勤務である以上、二人の予定が合わない日は会うことはしない、というのがそのときのルールだった。恐らくそこだけは、フローラの身体を気遣ってくれていたのだろう。
彼も不器用な男だったのだ。
「サミュエル。あなた、どうして私の部屋の鍵を持ってるの?」
「どうしてだろうな? ああ、どうしてだろう?」
フローラが問うと、サミュエルの動きが少し鈍くなったように感じた。
だけど、彼はフローラの狙いに気付いたようだ。ニタニタと笑いながら、ちらっと後ろに視線を向けると、またフローラに視線を戻す。
「もしかして、逃げようとしてる?」
「もしかしなくても」
「どうして?」
「サミュエル、あなたとはきちんと別れたでしょ。それにも関わらず、合鍵使って、人の部屋に勝手に入るようなことをして。そういう非常識な人間だとは思わなかった」
そこで、フローラは自分で口にした言葉に矛盾を感じた。なぜなら、フローラは彼と付き合っているときに、彼にここの合鍵を渡したことはなかったからだ。それは、逆もまた然り。
不規則な勤務である以上、二人の予定が合わない日は会うことはしない、というのがそのときのルールだった。恐らくそこだけは、フローラの身体を気遣ってくれていたのだろう。
彼も不器用な男だったのだ。
「サミュエル。あなた、どうして私の部屋の鍵を持ってるの?」
「どうしてだろうな? ああ、どうしてだろう?」
フローラが問うと、サミュエルの動きが少し鈍くなったように感じた。