【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 やはり、サミュエルの動きがおかしい。もしかして、その闇魔法で誰かに操られているのだろうか。という考えが、フローラの頭に浮かんだ。それを確かめる術は、魔力を探る、だったような気がするのだが。
『魔力を探るときには、頭の中で球のようなものをイメージするといいですよ。探りたい属性の色のイメージの球を。それを次第に大きくさせ、「パン」と破裂させる。破裂した破片で魔力を探る、という感じですかね』
 クリスから受けた魔法の教育というものが、こんなに役に立つとは思わなかった。アリハンスまでの遠征も然り、そして今も。
 フローラは頭の中で透明な球を思い描いた。それでも視線はサミュエルから逸らしてはならない。間合いを詰められて、四肢を拘束される恐れがあるからだ。力ではサミュエルに適わない。
 彼女の頭の中の球は弾け、その破片はサミュエルに向かって降り注ぐ。それが彼に吸収されたら、何らかの闇魔法で操られている、ということだ。そしてフローラは心のどこかでそうであって欲しい、とも思っていた。
 その思いが現実になったのは、フローラにしか見えないその破片がサミュエルの身体に吸収されていったからだ。
 やはりこれは彼の意思ではない。それだけでも、心のどこかで安心できる自分がいる。
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