【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 剣は一本。目の前の敵から護衛対象者を守るために振るうもの。
 だけどこの魔法は、一歩制御を間違えれば、周囲にいる人たちも巻き込んでしまう。しかも今は、闇という危険な魔法を扱っている。
「フローラ、今です」
 クリスの声に合わせて、練っていた魔力をサミュエルと向ける。放たれた魔力は、彼を取り囲むように襲い掛かった。
 フローラにはそれが見えている。もちろんクリスにも。
 だが、サミュエルには見えていない。突然、膝をつき、そのまま前に倒れ込んだ。
「フローラ」
 彼女の名を呼ぶ別な声が聞こえたと思い、振り向くとアダムとブレナンが立っていた。
「え、と団長、とブレナンさん?」
「ああ、フローラ。俺たちはサミュエルを連れていく」
「あ、はい」
 アダムとブレナンは、二人で倒れているサミュエルを連れて外に出る。フローラはその様子をただ呆然と眺めていることしかできない。
「フローラ」
 クリスに名を呼ばれたフローラは彼を見上げた。
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