【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「あの、クリス様。ありがとうございました……。それから、ただいま」
 フローラがただいまと言うと、クリスはふっと噴き出した。
「え、と。クリス様?」
「いえ、お帰りなさい、フローラ。無事で帰ってきてくれて何よりです」
「あ、はい。本当は、クリス様に早くお会いしたかったのですが、その、少し疲れてしまって。それで会いに行けなくてごめんなさい」
「ええ。あなたのことですから、ずっと魔力で魔獣を威嚇されていたのでしょう」
「あ、はい。クリス様から教えられた通りに」
 きゅっと、繋がれた手に力を込められたことにフローラは気付いた。彼に視線を向ける。
「どうかされましたか?」
「いえ。こちらに来る前にあなたを抱きしめてから来ればよかった、と、今、後悔しております」
「え、と。では。今はこれで我慢してください」
 フローラが立ち止まると、クリスも慌てて立ち止まる。そして彼女はクリスの肩に手をかけて少し背伸びをし、彼の頬に軽く口づけた。
「フローラ?」
 クリスは目を大きく見開き、驚いた表情を見せる。
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