【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。

　先ほどまでの重々しい空気は急に軽くなって飛んでいってしまったようだ。ここには明るい空気しか流れていない。一人、面白くなさそうな顔をしているのは、もちろんアダム。ノルトもそれに気付いてはいるのだが、今、彼にかける言葉が見つからない。
「では、私からの話は以上です。彼女を連れて帰っても問題はないですね」
　許可が出る前にクリスは立ち上がる。言いたいことを言い、それが終われば退散する。それがクリスという男なのではあるのだが。
「ああ、問題はない。君たちが幸せになること。それがこの国にとっての利益にもなる」
　国王が帰宅の許可を出したため、クリスはフローラに手を差し出した。もちろんこれは「帰りますよ」という意味である。
「失礼します」
　フローラは頭を下げてからクリスの手をとり立ち上がる。


　残された面々はそんな二人の後姿を見て、ほぅとため息をついた。
「陛下、政策の第一号が成功しそうでよかったですね」
　宰相が言う。
「統計学というのも悪くはないらしい。あとは彼らが優秀な遺伝子を後世に残してくれることを待つだけだな」