【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。

　国王の言う優秀な遺伝子とは、つまり子を為し、子を生むということ。この面子の手前、そのような表現をしているが心の中は「早く赤ちゃんに会いたいなぁ」と世話焼きおじさんらしい気持ちでいっぱいである。
「だからといって、今、彼女に抜けられては非常に困るのだが」
　ここで仏頂面のアダムがやっと口を開いた。
「結婚はいい。だが、その先については、計画性を持ってもらいたい」
　アダムのその言葉を宥めるかのように割り込むのがノルト。
「まあまあ。そう言わさんな。クリスは別に、フローラ嬢が仕事を辞めることを望んではいない。それにあの二人を見ただろう。こんな状況下におかれても、幸せそうなあの二人をさ」
　ちっ、とアダムは舌打ちをした。どう見ても分が悪いのはアダム。アダム以外のメンバーはあの二人の関係を受け入れている。むしろ、そうなることを望んでいる。
「ジェシカ様の縁談がまとまるまでは、クリス殿には自粛していただきたいものだな」
「自粛って、なんのだ？」
　ノルトが尋ねる。
「子作りのだ」
　何をわざわざ確認する必要がある、と言わんばかりのアダムのそれ。
「無理だな」
　そう呟いたのは、なぜかブレナンだった。