【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「おいおい、ブレナン。君までもクリスに手懐けられてしまったのか?」
 アダムの方が年下にも関わらず、ブレナンにそのような態度で接することができるのは彼が団長という立場にあるからだろう。
「手懐けられた、という表現はいささか間違っているな。彼をフローラの相手として認めた、が正しい。理想を追い求めるのもいいが、現実を受け入れる力も必要だ。まだまだ青二才だな」
 ははっとブレナンが笑った。ちっ、とアダムが舌打ちをする。
「だが、クリスのあの問題は、問題ないのだろうか」
 宰相が口にしたクリスのあの問題。クリスの相手の女性に求められる魔力の問題。彼の子を孕むだけの魔力がフローラにあるのか、ということ。
「問題、ないんじゃないのかな」
 誤魔化すように呟いたのはノルトだ。彼は知っている。それはもう、いろいろと。
「近頃、フローラの魔力も高まってきているようだ。クリス殿のおかげかもしれない。今回の遠征も、あのアリーバ山脈を越えて無事に行き来できたのも、そういうことだろうな」
 やんわりと言葉を濁すブレナン。
「おい、そういうことってどういうことだ?」
 もしかしたらブレナンよりもアダムの方がフローラの父親的存在なのかもしれない。しかもよりによっての頑固親父。お前のような男に娘はやらん、と。
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