【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 そろりと扉を開けると、暗い表情のナッティがそこに立っていた。
「ナッティ。その、ジェシカ様の姿が見えない、というのは? 今日の護衛は?」
 フローラの頭の中は、ぐるぐるといろんな考えが混ざり合っていて、心の中はどす黒い気持ちが漂っていた。というのも先日のサミュエルの件、つまり関係者が探し回っている闇魔法の使い手の件があるからだ。
「あ、はい。申し訳ありません。その、ジェシカ様もいろいろと思うところがあったらしく、一人になりたいとおっしゃられたようでして……」
 だからといって彼女から目を離すなど言語道断。何のための護衛なのか。だが、今日の護衛担当者を責めるのもお門違いというもの。自分は休暇中の身なのだから。
「それで、ジェシカ様のことですから、もしかしたらフローラさんに会いに行っているのではないかということも考えまして……」
 つまり、例の縁談の件で何か相談したいことがあった、ということだろうか。フローラに聞きたい何かが。
「ナッティ、私もジェシカ様を探します」
「ありがとうございます」
 ナッティは泣きそうな表情をしていた。フローラも心の中では泣きたい。
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