【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 だが、地下へ通ずる階段の扉へと来たとき、その残留魔力さえ感じなくなってしまった。
「地下、か?」
 アダムが尋ねる。
「恐らく。ですが、これ以上、フローラの魔力を探ることができません」
 それは相手の力のせいなのか。それとも彼女がいる場所のせいなのか。
「魔力が探ることができない場所で、それが地下にあるということは。思い当たるのは一つしかないのですが」
 アダムも気付いたのだろう。
「冷牢か……」

****

 ピチャン、ピチャン。どこかで水が滴る音がする。真っ暗な闇の中で、次第に目が慣れてきた。全てのものを把握することは難しいが、なんとなくジェシカがそこにいる、ということだけはわかった。
「ジェシカ様」
 フローラが声をかけると「んーんー」という言葉にならないくぐもった声。ここに閉じ込められる前に目にしたあの姿からわかっていることは、彼女は言葉を封じられている。
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