【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「お初にお目にかかります。魔導士団副団長を務めております、クリス・ローダーと申します」
 クリスの挨拶が思っていたよりもまともであったため、フローラは拍子抜けしてしまう。
「ローダー。もしかして、君の父親はあのセイジ・ローダーか? 元宰相の」
「あ、はい、そうです。ご存知でしたか?」
「いや、彼には世話になった。まあ、そこにかけなさい」
 父親に促され、二人は並んで座る。そして父親は昔から彼に仕えている使用人にお茶を淹れるように指示をする。
 フローラの父親に仕えている使用人は老夫婦で、むしろこの二人しかこの離れにいないらしい。父親の世話だけならこの二人で充分だ。
「それで、彼女と結婚をする許可をいただきたいのですが」
 とクリスが口にすると、父親は穏やかに笑った。
「私に反対する権利等ないだろう。どうか娘を幸せにしてやって欲しい」
「ありがとうございます」
「お父さん、ありがとう」
 フローラもそう口にすると、父親は微笑する。
「ローダー殿は元気にしているか?」
「父ですか? そうですね、田舎の領地でのんびり暮らしております」
「確か、彼は東の方に領地を持っていたはずだな」
「はい。ここからですと、馬車で一日程度ですので。結婚式は向こうで挙げさせてもらっても?」
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