【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。



 フローラの父親が言うには、聖人(きよら)がその力を失ったのはフローラを妊娠したからだった。だが、それが公になっては堕胎させられるかもしれないということを彼女はしきりに心配していた。
 彼女の相手に心当たりのあった、当時の宰相でありクリスの父親でもあるセイジが、聖人(きよら)を逃がすことに手を貸してくれた。彼は、聖人(きよら)とフローラの父親が想い合っていることを知っていたからだ。
 セイジは彼女のお腹の子の父親が彼であることを突き止めると「聖人(きよら)がいなくなったのだから騎士をやめて田舎に戻れ」としきりに勧めてきた。表向きは。
 だから、力を失った聖人(きよら)は、その魔力を探られることもなく、逃げたこの地でお腹の子を育みながらのんびりとした時間を過ごすことができたようだ。聖人としてあの王宮で暮らしていたときとは違う暮らしを手に入れ、愛する者とその子を育みながら。
「だが、フローラ。君が生まれて、シーラの力が全て引き継がれていたことに、気付いてしまった。だから、シーラはしきりに君に謝っていた」
 だから母親はフローラの力を封じた。フローラの出産後、徐々に戻ってきたその力で。だが、一生その力を封じるというのは難しい。だから、娘が本当に愛する人と出会うまで、という条件でその力を封じた。
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