【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「だがこうやって、結婚したい相手を連れてきてくれたことは、本当に嬉しい。できればシーラにも会わせてやりたかった。しかも相手があの宰相の息子。これほど喜ばしいことがあるか?」
「ありませんね。やはり、私とフローラは生まれる前からこうなる運命であった、ということですね」
「ははは。さすがあの宰相の息子だけあって、面白いことを言う男だな。気に入った」
 しんみりとした空気を吹き飛ばしてしまうのは、クリスだからこそできる技なのかもしれない。
 父親は使用人に酒を準備させると、クリスと共に杯を交わし始めた。
「じゃ、私、何か食べるものを作ってくるわ」
 フローラは老夫婦と一緒に厨房に向かうと、何やら料理を始める。あのクリスがあの父親に受け入れてもらえるかが心配だったけれど、あの調子なら大丈夫だろう。
 その日は夜遅くまで、笑い声が響いていた。
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