【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「そう。それでもあなたのお母様は、それを知っていながらあなたを生んだのでしょう? あなたのお母様が命をかけて生んだあなたを、どうして嫌いになることができるの?」
「ですが。もしかしたら、同じことがあなたの身に起こるかもしれない」
 クリスはそれが不安だった。魔力が強いがゆえ、母親の命を奪い、そしてその魔力によって彼女の命までも――。
「無いわ。絶対に、無い」
 フローラは自信満々で答える。それはけして、クリスを安心させるための嘘でも見栄でもない。
「どうしてそう言い切れるのですか? 私はあなたを犠牲にしてまで自分の子が欲しいとは思えない」
「でも、安心して。それは絶対に無いから」
「なぜ?」
「だって、私は聖人(きよら)の娘だもの。私を信じなさい」
 ふふっと笑って、フローラの方からクリスの唇に自身の唇を重ねた。
 こうなったらクリスも自分の気持ちを止めることなどできるわけがない。その口づけに応えながら、ゆっくりと彼女を押し倒す。
 クリス自身もこうやって自分を受け止めてくれるフローラと出会えたことが奇跡であると思っていた。
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