【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
 だからといって会いに行こう、という気持ちにもなれなかった。フローラにも仕事があるのだ。しかも彼女は護衛騎士隊と言っていた。女性が担当する護衛対象者は王族関係者だ。恐らく、あの陛下の娘であるジェシカの護衛を担当しているのだろう、というところまで推測した。

 クリスの言葉を聞いたノルトは「だからか」と思った。
 実は彼を呼び出す前に、ノルトはあの宰相から呼び出しを受けていた。クリスの休暇を融通してやって欲しい、と。その場にいたのはノルトだけではなかった。騎士団団長であるアダム・パターソンも同席していた。
 理由はクリスとフローラが付き合いを始めたから。できれば、彼らを結婚させたいと考えている、と。宰相からそのような言葉が出ることが意外だった。そのときそれが国の政策であることも聞かされた。
 だが、ノルトにとってはクリスが付き合ってもいいと思えるような女性と出会えたことの方が意外だった。だから、宰相の言葉には素直に従うことにしてみたのだ。絶対に何か面白いことが起こるぞ、という期待も込めて。
 アダムの方は、苦虫をかみつぶしたような表情をしていた。話を聞くと、クリスの相手であるフローラはどうやら魔法騎士である、とのこと。今は第一王女であるジェシカの護衛騎士を務めていると。これから外交が多くなることが予想されるため、彼女に今、抜けられては非常に困る、という話であった。
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