【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。

「母さん。父さんが、じいちゃんの家に行ってこいって。ねえ、母さんも一緒に行こう？」
　あらあら、困ったわね。とフローラは子供たちを見回している。
「じゃあ、今度、みんなでおじいちゃんの家に遊びに行きましょうね」
　フローラが言う。
「でも、父さんは仕事が忙しいみたいだし、父さんはいなくていいよ」
　次男のヘイデンが言い出す始末。
「むしろ、君たちだけで行ってきなさい。まだジェニファーが小さいんだ。フローラはそんな遠くには行かない」
　子供たち相手にムキになっているクリスだが、これはいつもの事。むしろ、そろそろ十歳になる長男のスタンの方が大人なのかもしれない。
「父さんはいつもこれだから。母さんのことが好きなのはわかるけど、もう少し大人になったらどうなのさ？」
　肩をすくめながら言う。それに対してクリスは何も言えない。何しろ事実だからだ。
　そしてこんなやり取りはフローラにとってはいつも目にしている光景。この長男がクリスに似て口が達者になってきたところだ。むしろ、クリスを上回る勢いだ。
「さあさあ、みんな、お夕飯にしましょうね」
　フローラが言うと、子供たちは祖父であるセイジの腕を引っ張って食堂へと向かう。それを率先して行っているのが長男のスタンであるから、彼はクリスよりも空気を読む力があるのかもしれない。