【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
　みるみるうちにフローラの表情が変わった。先ほどまでの照れていた様子はなく、少し真顔になっている。
「サミュエルとは……、別れました」
「別れたのか」
　ついアダムは、机の上に両手をバンとついて、立ち上がってしまった。その音が思ったよりも大きかったためか、フローラはビクリと身体を震わせた。
「あ、すまない。怒っているわけではない。君たちが別れた、ということにこちらも驚いてしまっただけだ。てっきり、結婚するものだと思っていたからな」
　だから、二人の結婚式ではあんなことやこんなことのサプライズをしてやろうと、考えていたアダムでもある。
「えっと。サミュエルからは、結婚したら仕事を辞めて欲しいと、言われてまして……」
「辞めるのか？」
「いえ、辞めません。というか、サミュエルとは終わってますから……」
「ああ、すまない。君が仕事を辞めるとか言い出すから、少し動揺してしまった」
「あ、はい。仕事は辞めたくないので……、サミュエルとは結婚できないと言いました」
「言ったのか？」
「はい、言いました」
「それで、サミュエルはどうした？　妥協したのか？　結婚しても仕事を続けてもいい、と言ってくれたのか？」
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