【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「フローラの手は、冷たいですね」
「あ、すみません」
それはフローラが緊張しているからだろう。
「いえ」
二人は並んで歩いた。
空は雲一つ無い爽やかな青空で、太陽は優しく輝き、これから真上に上がってこようとしている。動き始めた町には、人がちらほらと行き交う。
クリスは歩調をフローラに合わせて歩いていた。こうやって男の人と並んで歩くことは、フローラにとって初めてのことになる。
あのサミュエルはすたすたと前を歩き、フローラが遅れると「遅い」というような性格だった。だがそんな彼と共に歩いた記憶も付き合っていた期間の中ではほんの数回。ちょっと食料の買い出しに行った程度。それ以外はほとんどフローラが一人で買い物へ行き、サミュエルは家で留守番という名の昼寝をしていた。
だからフローラはふとクリスの顔を見上げてしまったのだ。
「私の顔に、何かありましたか?」
どうやら気づかれていたらしい。フローラが前を見ず、彼の顔を見上げながら歩いていたことに。
「いえ。こうやってクリス様と並んで歩いていることが、現実なのだろうかと。そう、思っていただけです」
「あ、すみません」
それはフローラが緊張しているからだろう。
「いえ」
二人は並んで歩いた。
空は雲一つ無い爽やかな青空で、太陽は優しく輝き、これから真上に上がってこようとしている。動き始めた町には、人がちらほらと行き交う。
クリスは歩調をフローラに合わせて歩いていた。こうやって男の人と並んで歩くことは、フローラにとって初めてのことになる。
あのサミュエルはすたすたと前を歩き、フローラが遅れると「遅い」というような性格だった。だがそんな彼と共に歩いた記憶も付き合っていた期間の中ではほんの数回。ちょっと食料の買い出しに行った程度。それ以外はほとんどフローラが一人で買い物へ行き、サミュエルは家で留守番という名の昼寝をしていた。
だからフローラはふとクリスの顔を見上げてしまったのだ。
「私の顔に、何かありましたか?」
どうやら気づかれていたらしい。フローラが前を見ず、彼の顔を見上げながら歩いていたことに。
「いえ。こうやってクリス様と並んで歩いていることが、現実なのだろうかと。そう、思っていただけです」