【受賞】国をあげて行う政策によって付き合いを始めた二人のお話。
「そう。師匠には紹介しようと思いまして」
 クリスは片眼鏡の白髭を師匠と呼んだ。
「こちら、先日からお付き合いをさせていただいている、フローラ嬢」
 フローラは驚いた。まさかこのタイミングで彼に紹介されるとは思っていなかったからだ。
「フローラ・ヘルムです」
 せっかく紹介してもらえたので、挨拶をしてみた。
 片眼鏡の白髭は、ゆっくりと二人の前に近づいてきた。そして、フローラの顔をじっと見る。
「ほう。面白い娘だな」
「師匠。あまり彼女を見つめるのをやめていただけませんか? 師匠の目で見られたら、彼女が腐ります」
「もしかして、そのような魔法をお使いになっているのですか?」
 思わずフローラは声をあげてしまった。ちょっと恐ろしくなり、一歩下がってクリスの背後に隠れようとする。だがそれを「違いますよ」とクリスはなだめていた。
「お前。まさか。彼女と結婚するつもりなのか?」
 片眼鏡の白髭が聞いた。
「いずれ、そのうち」
 クリスが答えた。クリスの背後に半分隠れたフローラは何も言えない。
「そうか、そうかそうか」
 あはははと豪快に笑いながら、また店の奥へと消えていった。
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